まったく……この国に何が起きているのか。
こうも堂々とやってくるとは。
 真昼間の城内。廊下には衛兵が何人も倒れていて物音が聞こえた少将の部屋に飛び込んだ。
飛び込んだ俺の視界には荒れた室内で倒れているランドル少尉にシルバ少将。
それを見下ろしているツンツン頭の男。
見ている訳にはいかないのは当然で、俺は剣を抜きツンツン頭に向かう。
ツンツン頭は避けながら俺の背中に剣を振り下ろすが、それを弾いて少将の前に立つ。
「ここは城なんだが……それを分かってる……よな?」
「当然だろう。で、アンタは俺の邪魔をしてる。それも分かってるよな?」
 俺の質問に質問で返すツンツン頭の男。
その手には抜かれた剣。その剣の輝きはラビットが持っていた剣に似ている。
あの女を探し出す必要があるな、これは。
「で、どうする?」
 笑う様な目のツンツン頭。
「決まってるだろう、お前を捕らえ話を聞かせてもらう。」
「じゃ、」
 言い切る前にツンツン頭の剣が煌く。
それを受け止め、右に捌いて踏み込む。
剣から左腕を放し肘打ちを当てる。が、ツンツン頭は下がってそれを避ける。
右腕を大きく振りかぶり踏み込んだ勢いを乗せて剣を振り下ろす。
飛び散る火花に甲高い金属音が響く。剣を両手に持ちそのまま押さえ込む。
ぎりぎりと剣が音を立てる。間近で見るツンツン頭の目はまだ余裕がある。
ツンツン頭は左に動いて俺は体重をかけていた前方に倒れこむ。
ぎりぎりで倒れこむのを踏みとどまる。
「いい反応だ。」
 ツンツン頭の攻撃を受け、弾く。
「余裕見せてるとっ!」
 弾いた隙を狙い剣を突き出す。
剣はツンツン頭の服を掠める。
それからも何度も打ち合うが、ラビット程の速さも技量も感じない。
次第に落ち着いてくる心。そうなれば相手の動きも見れる。
さっきまで余裕を見せていたツンツン頭の剣筋が徐々に乱れてきた。
思う様に攻めきれない焦燥が表れているのだろう。
「何がおかしい!」
 怒鳴る男。どうやら俺が笑っていたらしい。
「さぁな。」
 戦闘中に喋るほどの余裕は俺には無いのだが、せっかく相手が焦っているのなら利用させてもらおう。
更に荒れる剣に脅威は感じなくなった。
後は、攻めに転じるチャンスを逃さない事。それだけだ。

 窓を蹴破って入ってくる人影。
突然の乱入者は俺達の間に割って入る。
「まったく……手間をかけさせてくれるわね。」
 ツンツン頭に声を掛ている。
呼びかけようとするが、
「邪魔したわね。」
 一瞬の踏み込みは風のように間合いを詰める。
腹に鈍い痛みを受け、そのまま倒れる。
「おい! これは俺の任務だろうがっ!」
「事情が変わったのよ。詳しくは後で聞きなさい。」
 女はそのまま窓へと向かう。
ツンツン頭の舌打ちが聞こえる。
「命拾いしたな。」
 ツンツン頭の窓の外へと姿を消す。
衛兵達の声が聞こえる。痛む腹を押さえて窓へと近づく。
倒れている兵士達。
「く、どうなってるんだよ。」
 執務室の扉が開く、
ようやく駆けつけた衛兵達に後の事は任せて、俺は座り込んだ。

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